<事例>
甲と乙の夫婦は、夫である甲所有の自宅で甲の収入で生活を営んでいました
妻である乙は、国民年金の収入のみです
乙は、数年前から軽度の認知症となったため甲だけでは介護が難しくなったため
近所の介護付き有料老人ホームの単身用の部屋に入居しました。
このホームは、入居者が死亡するか契約を解除するまで継続して介護を受けて
生活することができるので、甲は安心して任せることにしました
入居に関する一時金1000万円と、その後の月額サービス料20万円はすべて
夫である甲の預貯金から支払っていました。
入居一時金は、60ヶ月で均等償却する契約になっています。60ヶ月未満で
死亡あるいは解約すると未償却残高が返還されます。一方、60ヶ月を超えて
死亡あるいは解約すると一切返還金はありません。
しかし、夫である甲は妻乙が有料老人ホームに入居後まもなく死亡しました
さて、この場合妻乙の有料邦人ホームの入居一時金に関する相続税・贈与税の
扱いはを教えてください
<解説>
有料老人ホームに入居している場合の入居一時金の取扱や
小規模宅地の特例の適用については、様々な論点がありますが今回は
入居一時金を負担した夫が先に死亡した場合の論点を解説いたします
まず、夫甲が死亡した場合でも妻乙は引き続きホームで生活を継続しています
ので入居一時金の返還はありえません。
従いまして、入居一時金の未償却残高を甲の相続財産として算入する必要は
ありません。
次に、甲が乙の入居一時金を負担した事実が贈与税の課税対象として扱われるか
どうかが論点になります
つまり甲が乙の入居一時金を負担した事実が
1.扶養義務の履行に該当するかどうか
2.扶養義務の履行の範囲を超えるものであっても扶養義務者相互間において
生活費に充てるために通常必要と認められるものであるかどうか
という2つのポイントを確認する必要があります。
まず相続税法第1条で配偶者は扶養義務者であることを定めています
しかし、有料老人ホームの入居一時金の全額を負担する行為が扶養義務の履行の
範囲であるかどうかは意見が分かれるようです
次に、仮に入居一時金が扶養義務の範囲を超えた行為であると考えた
場合であっても、相続税法21条の3第1項第2号に以下のように定めています
『扶養義務者相互間において生活費又は教育費に充てるためにした
贈与により取得した財産のうち通常必要と認められるもの』は、贈与税の課税価格
に算入しない。
つまり、今回の甲が乙の入居一時金を負担した行為が、扶養義務者間相互において
生活費に充てるために通常必要と認められるものの範囲と考えられれば
贈与税の課税対象となりません。
この点につきましては、裁決事例としては上記条文を適用して
贈与税の非課税財産と判断した事例と、上記条文の適用外として
贈与税を課税した事例と見解が分かれているようです
なお、上記条文の適用外として贈与税の課税対象とした事例では
入居一時金が1億円を超えている事例です
入居一時金の負担については、税務の判断によって贈与税・相続税の
税額に大きく影響を与えますので事前に税の専門家である税理士に
ご相談ください
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