【銀行交渉のポイント編-23 実現可能性の高い経営改善計画が策定されていると考えられる場合の銀行の評価は? 】
信用金庫や地銀は、中小企業へ融資するかどうかの判断を行うに
当たって金融庁の検査マニュアルに従って判断を行います。
その検査マニュアルには、具体的な事例とともに銀行
(信用金庫・地銀)が融資するかどうかを判断したポイントと、
その判断基準の適否について解説が記載されています。
この【銀行交渉のポイント編では】27パターンの事例を紹介します。
中小企業の経営者の皆様におかれましては、
御社の決算内容、銀行との交渉と比べながら読んでいただくと
わかりやすいと思います。
以下の事例集は、すべて銀行(信用金庫・地銀)の立場から
書かれた内容なのでこの文中で債務者と表現されているのは、
一般の中小企業のことです。
【事例-23 実現可能性の高い経営改善計画が策定されていると考えられる場合の銀行の評価は? 】
<概況>
債務者は、当金庫メイン先(シェア 98%、与信額:平成15年 3 月
決算期230百万円)で、地元に本社を置く老舗の靴小売店である。
<業況>
債務者は、景気の低迷から徐々に売上が減少するとともに、量販店の
進出の影響もあって、大幅な経常赤字状況を余儀なくされていた。
また、3年前には、後継者である長男が長年の不良在庫を一掃し、
海外の人気ブランドを中心とする売り場を中心とした営業への切り替え
のため、当時の返済金額を軽減し最終返済期限を当初約定より7年程度
延長する条件変更を金庫に要請してきた。
当金庫では、債務者とのこれまでの取引関係や今後の営業についても、
後継者である長男が中心となっている点などを勘案し、これに応じた
ところである。 当年度の債務者の状況は、当地では手に入りにくい
海外人気ブランドの好調やリストラ等により、赤字体質からの脱却
できる状況となったところである。しかしながら、債務超過の解消には、
今後10年程度を有する状況にある。 なお、担保により債務の半分
程度は、保全されている状況にある。
<自己査定>
当金庫では、赤字体質は脱却したものの、現時点では条件変更前の状況
に回復していないこと、大幅な債務超過の解消には長期間有することから、
債務者区分は要注意先とした。
しかしながら、当金庫では信用格付けに基づくリスク管理体制を整備し、
債務者の状況は 3 年前の格付けから上位に遷移しており
(要注意先の中で)、担保保全状況等を加味した実質的な利回りが
上位遷移後の債務者に対する基準金利に比して高位にあることから、
本年度からは貸出条件緩和債権には該当しないと判断している。
<検証ポイント>
債務者の状況が好転し信用リスクが軽減した場合の貸出条件緩和債権
の取扱いについて(いわゆる卒業基準)
(解説)
1.貸出条件緩和債権については、銀行法施行規則において規定され、
その具体的な事例は、中小・地域金融機関向けの総合的な監督指針に
おいて規定されている。
中小・地域金融機関向けの総合的な監督指針では、元本返済猶予債権
(元本、。の支払を猶予した貸出金)のうち、貸出条件緩和債権に該当する
ものとして
「当該債務者に関する他の貸出金利息、手数料、配当等の収益、担保・保証等
による信用リスク等の増減、競争上の観点等の当該債務者に対する取引の
総合的な採算を勘案して、当該貸出金に対して、基準金利(当該債務者と
同等な信用リスクを有している債務者に対して通常適用される新規貸出
実行金利をいう。)が適用される場合と実質的に同等の利回りが確保されていない
債権」が考えられるとしている。
これは、返済期限の延長が行われた場合であっても、条件緩和後の債務者
に対する基準金利が適用される場合と実質的に同等の利回りが確保されている
ならば貸出条件緩和債権(元本返済猶予債権)に該当しないというものである。
2.貸出条件緩和債権からの上位遷移については、貸出条件を緩和した後に
債務者の状況が好転し信用リスクが軽減すれば、その時点における基準金利が
適用される場合と実質的に同等の利回りが確保されているかにより貸出条件
緩和債権に該当しないか否かを判断することが必要である。
したがって、本事例のように債務者の状況が好転し、キャッシュフローが
回復している場合には、好転した債務者の状況に応じた基準金利が適用される
場合と実質的に同等の利回りが確保されているのであれば、原則として、
貸出条件緩和債権には該当しない。
3.基準金利が適用される場合と実質的に同等の利回りが確保されているかの
検証に当たっては、信用保証協会の保証に代表される保証状況や担保の状況、
代表者の資産提供意思などを総合的に勘案し判断することが必要である。
本事例においては、担保保全状況が総借入の半分程度であることから、
総合的な利回りについては、信用リスクが半減されていることを踏まえて
算出している。
4.なお、本事例のように赤字体質を脱却し、10年程度で債務超過の解消が
見込まれている場合には、好転した債務者の状況に応じた基準金利が適用される
場合と実質的に同等の利回りが確保されていない場合であっても、合理的かつ
実現可能性の高い経営改善計画が策定されていると考えられることから、
貸出条件緩和債権には該当しないものと判断して差し支えないと考えられる。
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今回のポイントは、『赤字体質からの脱却できる状況となった』『経営改善
計画により今後10年程度で債務超過を解消できること』『担保により債務の
半分程度は、保全されている状況にある。』場合の評価です。実現性の
高い経営改善計画を作成することは、やはり重要なようです
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