<事例>
Aさんは、自らが代表取締役を務める株式会社Xに対して
1億円の貸付債権があります。(株式会社Xでは、役員借入金に計上
されています。)
Aさんは、昨今の不景気を考えると会社の業績が回復することは
困難であると考え、また長男Bが株式会社Xの代表取締役を
継いでくれることから、貸付金1億円の債権放棄を検討していました
そこで、Aさんは株式会社Xへの貸付債権1億円を放棄する旨の
公正証書遺言を作成しました。
株式会社Xには、繰越欠損金が5000万円しかありません。
さて、この場合の課税関係を教えてください
(株式会社Xは、株主全員がAさんの法定相続人とします)
<解説>
業績が悪化した場合、代表取締役が法人に資金を貸付することは
よくあることです。また、その貸付金の回収がほぼ不可能であるにも
かかわらず、残高だけは多額に膨らんでいるケースも少なからずあります。
さて、Aさんは1億円の債権放棄する旨の公正証書遺言を作成しました。
相続は、個人にしか財産の承継ができませんが遺贈であれば法人への
財産の承継も可能です。
ただし、法人の場合は相続税ではなく法人税が課税されることになります
今回の場合、Aさんの債権放棄により株式会社Xには1億円の
債務免除益が計上されます。
一方で、繰越欠損金が5000万円計上されていますので
実質的には1億円-5000万円=5000万円が法人税の課税対象となります
つまり、Aさんの配慮で行った債権放棄によって株式会社Xには
多額の法人税の納税負担を強いる結果となってしまいます。
さらに、1億円の債務免除益が計上されることによって株式会社Xの
株価の増加があり得ます。
その場合、みなし遺贈として他の株主に対して相続税が課税されます
今回の場合、Aさんの法定相続人全員が株式会社Xの株主となっていますので
法定相続人全員に、みなし遺贈が発生します
【相続税基本通達9-2】
同族会社の株式又は出資の価額が、例えば、次に掲げる場合に該当して
増加したときにおいては、その株主又は社員が当該株式又は出資の価額
のうち増加した部分に相当する金額を、それぞれ次に掲げる者から贈与
によって取得したものとして取り扱うものとする。
この場合における贈与による財産の取得の時期は、財産の提供が
あった時、債務の免除があった時又は財産の譲渡があった時による
ものとする。
(1)会社に対し無償で財産の提供があった場合
当該財産を提供した者
(2)時価より著しく低い価額で現物出資があった場合
当該現物出資をした者
(3)対価を受けないで会社の債務の免除、引受け又は弁済があった場合
当該債務の免除、引受け又は弁済をした者
(4)会社に対し時価より著しく低い価額の対価で財産の譲渡をした場合
当該財産の譲渡をした者
以上より、Aさんの公正証書遺言によって、法人も法定相続人も
すべて課税される結果となってしまいます。会社経営者が債権放棄する
場合は、課税関係も充分に考慮したうえで行ってください
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