信用金庫や地銀は、中小企業へ融資するかどうかの判断を行うに
当たって金融庁の検査マニュアルに従って判断を行います。
その検査マニュアルには、具体的な事例とともに銀行
(信用金庫・地銀)が融資するかどうかを判断したポイントと、
その判断基準の適否について解説が記載されています。
この【銀行交渉のポイント編では】27パターンの事例を紹介します。
中小企業の経営者の皆様におかれましては、
御社の決算内容、銀行との交渉と比べながら読んでいただくと
わかりやすいと思います。
以下の事例集は、すべて銀行(信用金庫・地銀)の立場から
書かれた内容なのでこの文中で債務者と表現されているのは、
一般の中小企業のことです。
【事例-21 全額保障協会保証付融資の返済条件変更時の銀行の評価は?】
<概況>
債務者は、当組合メイン先(シェア 90%、与信額:平成 13年 3月
決算期 75百万円)。中小出版社を主な取引先とする製本業。代表者と
その妻、及び代表者の妹の3人で営む個人事業。当組合とは、代表者が
大手製本業者から独立開業して以来5年の取引歴を有する。 当組合は、
開業時に工場建設や機械取得等の開業資金に応需し取引を開始した。
(証貸 100百円、期間 20年、金利 3.5%、全額信用保証協会保証付)
<業況>
開業後、手堅い仕事振りが認められ除々に取引先を開拓し順調に推移
してきたが、最近の景気低迷や若者の活字離れなどから、受注の減少や
受注単価の切り下げによる採算割れの仕事の増加から、売上は2期連続
低下し、最近は預金の取り崩しや妻、妹の給与などの切り詰めにより、
返済資金を賄ってきた。
しかしながら、ここに来ての売上の減少による資金繰り悪化には勝てず、
6年目からの返済金額を軽減し最終返済期限を当初約定よりさらに10年
延長する条件変更を組合に要請してきた。(金利は据え置き) 当組合、
信用保証協会も代表者のこれまでの取引振り等を勘案しこれに応じた。
<自己査定>
当組合は、売上の減少に伴う返済能力の低下は明らかであり、今後
短期間で条件変更前の状況に回復する見込もないと判断されることから、
債務者区分は要注意先とした。
しかしながら、証貸は全額信用保証協会保証付貸出金であることから、
貸出条件緩和債権に該当しないと判断している。
なお、当組合は信用格付に基づくリスク管理態勢が未整備のため、
中小・地域金融機関向けの総合的な監督指針で示されている基準金利に
基づいて貸出条件緩和債権(元本返済猶予債権)の判定を行っていない。
<検証ポイント>
信用保証協会保証付貸出金に対し期限延長を行った場合の貸出条件
緩和債権(元本返済猶予債権)の取扱いについて
<解説>
1.貸出条件緩和債権については、銀行法施行規則において規定され、
その具体的な事例は、当庁の中小・地域金融機関向けの総合的な監督指針
において規定されている。
中小・地域金融機関向けの総合的な監督指針では、元本返済猶予債権
(元本の支払を猶予した貸出金)のうち、貸出条件緩和債権に該当するもの
として「当該債務者に関する他の貸出金利息、手数料、配当等の収益、
担保・保証等による信用リスク等の増減、競争上の観点等の当該債務者に
対する取引の総合的な採算を勘案して、当該貸出金に対して、基準金利
(当該債務者と同等な信用リスクを有している債務者に対して通常適用
される新規貸出実行金利をいう。)が適用される場合と実質的に同等の
利回りが確保されていない債権」が考えられるとしている。
これは、返済期限の延長が行われた場合、条件変更時の金利が、
債務者と同等の信用リスクを有している債務者に通常適用される新規貸出
実行金利を下回っているならば貸出条件緩和債権(元本返済猶予債権)
に該当するというものである。
2.しかしながら、本事例のような信用保証協会保証付貸出金については、
信用保証協会が公的信用保証機関であることから、通常、回収に懸念
はなく信用リスクは極めて低いものと考えられ、当該貸出金に係る新規
貸出実行金利水準は、基本的に極めて低い水準にあるものと考えられる。
(信用リスクコストを加味する必要性が極めて低いため。)
したがって、信用保証協会保証付貸出金については、条件変更時の
貸出金の金利水準が金融機関の調達コスト(資金調達コスト+経費コスト)
を下回るような場合を除き、原則として、当該貸出金については、
貸出条件緩和債権(元本返済猶予債権)に該当しないものと判断して差し支え
ないものと考えられる。
なお、このような取扱いは、貸出金が保証や担保によりフル保全されて
いる貸出金についても、原則として、適用されるものと考えられる。
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今回のポイントは、『信用保証協会保証付貸出金については、条件変更時の
貸出金の金利水準が金融機関の調達コスト(資金調達コスト+経費コスト)
を下回るような場合を除き、原則として、当該貸出金については、
貸出条件緩和債権(元本返済猶予債権)に該当しないものと判断して差し支え
ないものと考えられる。』という点です。
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