<事例>
Aさんは、祖父の代から(60年前)所有し続けているX土地100㎡
を父親から相続により取得しました。
AさんはX土地を月極め駐車場として利用していました。
その後3年前になって、X土地の西隣のY土地100㎡を購入すること
ができたため、XYを併せて月極駐車場として駐車場経営を
行っていました。
この度、Aさんは自宅購入資金等が必要となったために
X土地とY土地を宅地として造成したうえで一括して売却する
ことに決めました。
土地の造成費用は1000万円でした。
そこで、譲渡所得を計算するに当たってXYの土地造成費用の
取扱について教えてください
<解説>
今回の事例を検討するに当たっては、所有期間の異なるXとYを
別々に検討する必要があります。
まず、所有期間が3年で短期譲渡所得に該当するY土地については
Y土地購入時に金額に今回の造成費用の1/2を取得費として加算する
ことに問題はありません。
問題となるのは、X土地です。
X土地の当初の取得費が契約書等で証明できる場合と、取得費が
不明の場合に分けて検討する必要があります。
1.X土地の当初の取得費が契約書等で判明する場合には、Y土地と
同じ考え方で譲渡所得を計算します。
つまり、X土地の当初の取得費に今回の造成費用の1/2を取得費に
加算することができます。
2.問題となるのは、X土地の当初取得費が判明しない場合です。
税法では、昭和27年以前から所有している土地で取得費が判明しない
場合には土地売却代金の収入金額の5%を取得費とする旨の定めが
あります
今回の場合X土地の売却代金の5%を取得費として計算することが
できます。
そこで問題となるのが、
・5%の取得費に今回の造成費用の1/2を加算することができるか?
・あるいは、造瀬費用の1/2を取得費に加算せずに譲渡時の費用とする
ことができるか?
という二つの論点です。
結論から申し上げますと、2つともに×です。
そもそも5%の取得費には、その土地の取得及び改良に要した一切の
費用を含むと考えられますので、5%に今回の造成費を加算することは
できません。
また、造成費用は本来取得費の一部を構成する支出と考えられるので
譲渡時の費用(仲介手数料等)の一部と考えることはできません。
譲渡時に造成工事を行う場合には、譲渡所得の計算に留意する
必要があります。
参考:租税特別措置法第31条の4
『個人が昭和27年12月31日以前から引き続き所有していた土地等又は
建物等を譲渡した場合における長期譲渡所得の金額の計算上収入金額
から控除する取得費は、所得税法第38条及び第61条の規定にかかわらず、
当該収入金額の100分の5に相当する金額とする。』
なお、上記5%の概算取得費に関する租税特別措置法第31条の4は、
昭和28年以降に取得した土地についても適用できます
参考:租税特別措置法通達31の4-1
『措置法第31条の4第1項の規定は、昭和27年12月31日以前から引き続き
所有していた土地建物等の譲渡所得の金額の計算につき適用されるのであるが、
昭和28年1月1日以後に取得した土地建物等の取得費についても、
同項の規定に準じて計算して差し支えないものとする。』
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