<事例>
株式会社Xの代表取締役甲には、長男乙と長女丙の二人が
法定相続人となる予定です(甲の妻は既に亡くなっています)
甲は、株式会社Xの代表取締役であり100%株主です。X社は
設立以来業績が順調に右肩上がりで、株価も上昇傾向にあります。
長男乙は、既に後継者として役員に就任していますが
長女丙は、会社経営にまったく関与していません。
甲の財産のほとんどは、株式会社X社の株式です
さて、甲は乙への事業承継と自らの相続税対策を検討するに
当たって、ひとまず株式会社Xの株式を乙に贈与することにしました。
X社株式を乙に贈与するのは、まだまだ株価が上昇する
見込みのあるX社株については、相続時精算課税で次期後継者に
贈与したほうが、乙の税負担が少ないと判断したからです。
しかし、自らの財産のほとんどがX社株式である甲は
X社株式を乙に贈与することによって、丙に遺してあげる
財産がほとんどないことが心配です。
甲が、留意すべき点を教えてください。
<解説>
まず、今後も株価が上昇する見込みのX株を相続時精算課税で
後継者乙に贈与する案は、税法上は問題ありません。
相続時精算課税は、贈与財産であるX社株の評価額が贈与時の
評価額で確定します。そのためX社の株価が、実際に甲の相続が発生
した時点で贈与時の株価よりも上昇している場合、相続税の節税対策
として有効な手段となります。
しかし、今回の事例では民法上は検討すべき課題があります。
甲の相続財産のほとんどがX社株となっているためX社株を乙に
贈与した場合、長女丙が遺留分の減殺請求を主張する
リスクがあるので留意する必要があります。
遺留分の減殺請求については、民法では以下のように
定められているようです
遺留分減殺請求の対象となる財産は、贈与については相続開始の1年前に
したもののみが算入されます。 ただし、当事者双方が遺留分権利者に
損害を加えることを知って贈与をしたときは、一年前の日より前にした
ものについても、遺留分減殺請求の対象財産に算入します
(民法1030条)
また、特別受益に該当する財産は贈与の時点を問わず遺留分の
減殺請求の対象となる、という最高裁判例もあるようです
これらの民法の規定を考慮して、事業承継と相続税対策を同時に
実現させるためには、長女丙に遺留分の放棄を適法にしてもらう
必要があります。
(*特別受益・遺留分の放棄等については弁護士先生にご確認ください)
なお、平成20年10月から施行されている中小企業経営承継円滑化法では
後継者への株式の贈与等について、民法の遺留分の規定を緩和する
特別な措置が定められています。
ただし、適用に当たっては厳格な要件を満たす必要がありますので
事前に慎重に検討する必要があります。
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