<事例>
Aさんは、株式会社Xの代表取締役であると同時に株式会社Yの
取締役会長でしたが、平成20年1月に死亡しました。
X社、Y社ともに諸般の事情により死亡退職金の金額がなかなか
決定できませんでした。
そのためAさんの相続人である妻Bさんは、死亡退職金については
相続税申告書に一切記載しませんでした。
その後、平成22年6月(Aさんの死後2年6ヶ月経過)にX社の
取締役会で、Aさんの死亡退職金1000万円を配偶者であるBさんに
支給することが決定しました。
また、平成23年6月(Aさんの死後3年6ヶ月経過)にY社の
取締役会で、Aさんの死亡退職金500万円を同じくBさんに支給する
ことが決定しました。
さて、X社とY社から支給される死亡退職金に対する課税は
どのように扱われるでしょうか。
Aさんの相続人は、配偶者のBさんだけでした。
<解説>
X社の死亡退職金は、相続税の課税対象となります
Y社の死亡退職金は、Bさんの所得税の課税対象となります
相続税法では、死後3年以内に支給が確定した退職金等を
相続税の課税対象財産として定めています(相続税法3条1項2号)
今回の事例では、X社の死亡退職金が該当します。
ここで、注意すべきポイントがあります。
相続税法3条1項2号で定める死亡退職金には、生前に退職しその後
退職金の金額が、死亡後3年以内に確定した場合も含まれるという
点です。
(相続税法基本通達3-31)
『被相続人の生前退職による退職手当金等であっても、その支給
されるべき額が、被相続人の死亡前に確定しなかったもので、
被相続人の死亡後3年以内に確定したものについては、
法第3条第1項第2号に規定する退職手当金等に該当する』
以上より、X社の死亡退職金が確定したことによってBさんは
相続税の修正申告をしなければなりません。
ただし、このような事例の場合修正申告書について「正当な
理由があると認められる」ため、過少申告加算税は課税されません。
次に、Y社の死亡退職金ですがAさんの死後3年以上経過していますので
相続税の課税対象には該当せず、配偶者であるBさんの所得税の
課税対象(一時所得)になります。
そのため、Bさんは平成23年度の所得税確定申告でY社から受取る
Aさんの死亡退職金500万円を一時所得で申告しなければなりません。
(所得税基本通達34-2)
『死亡した者に係る給与等、公的年金等及び退職手当等で、その死亡後
に支給期の到来するもののうち9-17により課税しないものとされるもの
以外のものに係る所得は、その支払を受ける遺族の一時所得に該当する』
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