信用金庫や地銀は、中小企業へ融資するかどうかの判断を行うに
当たって金融庁の検査マニュアルに従って判断を行います。
その検査マニュアルには、具体的な事例とともに銀行
(信用金庫・地銀)が融資するかどうかを判断したポイントと、
その判断基準の適否について解説が記載されています。
この【銀行交渉のポイント編では】27パターンの事例を紹介します。
中小企業の経営者の皆様におかれましては、
御社の決算内容、銀行との交渉と比べながら読んでいただくと
わかりやすいと思います。
以下の事例集は、すべて銀行(信用金庫・地銀)の立場から
書かれた内容なのでこの文中で債務者と表現されているのは、
一般の中小企業のことです。
【事例-11 実現可能性の高い経営改善計画立案の重要性】
【概況】
債務者は、当信金メイン先(シェア80%、与信額:平成13年8月決算期 50百万円)
県内に 3 店舗を有するラーメン専門店である。
【業況】
過去いずれの店舗も立地条件が良く業況も順調であったが、4年前に、各店舗の
同一営業圏内に競合店が相次ぎ出店、2店舗の業績が急速に悪化、連続赤字を計上
し、2期前から債務超過に陥っている。
当金庫は、開業資金や改装資金に応需しているが、前期に、業績の悪化から約定
返済が困難となったとして、債務者から貸出金について返済条件の緩和(元本返済
猶予)の申出を受けた。これに対し、当金庫は今後の収支計画の策定及び提出を求
め、代表者は店舗改装、新メニューの追加等による黒字化を折り込んだ収支計画を
策定、提出した(計画では3年後に約定返済開始予定)。
現状、計画開始から1年が経過しようとしているが、代表者の地道な努力により、
業績は計画比8割以上の実績で推移し、赤字幅は縮小傾向にあるが、依然として債
務超過は多額なものとなっている。現状、法人預金の取り崩し、経費削減等により
資金繰りを繰り回している。
【自己査定】
当金庫は、現状、計画比 8割以上の実績で推移していることを踏まえ、要注意先
(その他要注意先)としている。
【検証ポイント】
収支計画の具体性及び実現可能性について
【解説】
1.売上減少により連続して赤字を計上し、大幅な債務超過に陥っている債務者
については、一般的には、当該債務者の財務内容からは返済能力は認められず、
今後、業況回復の可能性が低いと認められるのであれば、経営破綻に陥る可能性が
大きい状況にあると考えられ、破綻懸念先の債務者区分に相当する場合が多いと
考えられる。
しかしながら、金融機関等の支援を前提として策定された経営改善計画等が
合理的で、実現可能性が高いと判断される場合には、要注意先(その他要注意先)
に相当する可能性が高いと考えられる。
また、中小・零細企業等については、大企業の場合と同様に精緻な経営改善計画等
を策定できない場合があり、その場合であっても、当該計画に代えて今後の業況の
改善等の可能性を検討できる資料があれば、それに基づいて債務者区分の判断を行う
ことができると考えられる。
2.本事例の場合、債務者は4期連続で赤字、大幅な債務超過に陥っている。
返済についても元本返済猶予の条件緩和を実施している状況にあることから、今後、
返済能力の改善が見込めないならば、破綻懸念先に相当する可能性が高いと考えられる。
しかしながら、条件緩和の申出時に作成した収支計画に基づいて経営改善に努め、
1年を経過した時点で計画比8割以上の実績で推移し、2年後には約定弁済が
見込まれるなど業況の改善がほぼ計画に沿って進捗していると認められる場合には、
要注意先(その他要注意先)に相当する可能性が高いと考えられる。
3.なお、債務者によっては、金融機関が債務者からのヒアリング等により
経営指導計画書等を作成している場合がある。その際は、その内容について債務者が
同意していることに加え、また、再建の時期は明確か、過去の実績を無視した
売上・経費削減等の計画となっていないか、借入金の返済計画は妥当かなどについて、
これまでの経営実績、今後の収支見込等を踏まえ、検討する必要がある。
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今回のポイントは、一般的には、会社の財務内容からは返済能力は認められず、
今後、業況回復の可能性が低いと認められるのであれば、経営破綻に陥る可能性が
大きい状況にあると考えられます。しかし金融機関等の支援を前提として
策定された経営改善計画等が合理的で、実現可能性が高いと判断される場合には、
要注意先(その他要注意先)に相当する可能性が高いと考えられるます。
常日頃から、実現可能性の高い利益計画(経営改善計画)の作成が
重要なポイントとなるようです。
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