信用金庫や地銀は、中小企業へ融資するかどうかの判断を行うに
当たって金融庁の検査マニュアルに従って判断を行います。
その検査マニュアルには、具体的な事例とともに銀行
(信用金庫・地銀)が融資するかどうかを判断したポイントと、
その判断基準の適否について解説が記載されています。
この【銀行交渉のポイント編では】27パターンの事例を紹介します。
中小企業の経営者の皆様におかれましては、
御社の決算内容、銀行との交渉と比べながら読んでいただくと
わかりやすいと思います。
以下の事例集は、すべて銀行(信用金庫・地銀)の立場から
書かれた内容なのでこの文中で債務者と表現されているのは、
一般の中小企業のことです。
【事例-10 銀行は、新規設備投資や改築費用が多い業種の決算書をどのように評価する? 】
【概況】
債務者は、地元温泉地の中規模旅館で当行メイン先(シェア 80%
与信額平成13 年 9 月決算期 400 百万円)である。
【業況】
5 年前に宿泊客の落ち込みへの挽回策として、別館をリニューアル
したものの、売上は当初計画比 80%程度に止まり、伸び悩んでいる。
期間損益は多額な減価償却負担や金利負担から赤字を続け、
債務超過に陥っている。
当行は、運転資金のほか、当該別館改築資金(250 百万円、20 年返済)
に応需している。なお、当該改築資金については、現状正常に返済が
行われている。 代表者は、今後は新たな旅行代理店の開発及び
タイアップにより、宿泊客数の増加を図るとともに、人件費等の
経費削減にも取組み収益の改善に努めたいとしている。
【自己査定】
当行は、財務内容や収益力は芳しくないものの、現行、正常に
返済していることや代表者の経営改善に向けた意欲を評価して
正常先としている。
【検証ポイント】
業種の特性について
【解説】
1.中小・零細企業等の債務者区分の判断に当たっては、
その財務状況のみならず、代表者等の収入状況や資産内容等を総合的に勘案し、
当該企業の経営実態を踏まえて判断するものとされているが、
その際、業種の特性を踏まえた検討も合わせて行う必要がある。
一般的に、旅館業については、多額の設備資金を必要とし、
これら投資資金の回収に長期間を要するという特性を有している。また、
多様化する顧客ニーズへの対応のため、比較的短期間の内に設備更新のための
再投資(修繕費用等)も必要とされる。
旅館業の債務者区分の判断に当たっては、こうした業種の特性による
設備投資に伴う減価償却負担や金利負担の状況及び投資計画を踏まえた
収益性等について検討をする必要がある。
2.本事例の場合、返済は正常に行われているが、売上低迷、
毎期赤字、債務超過という面のみを捉えれば、要注意先以下に相当する
可能性が高いと考えられる。
一方、通常、減価償却費が定率法で算定される場合、投資後初期の
段階では減価償却費負担が大きくなることから、自己資本額が小さい
債務者の場合、赤字、債務超過に陥りやすくなるが、仮に、減価償却前利益が
今後一定の水準で推移するとした場合、時間の経過とともに、
減価償却費の減少から、減価償却後利益は黒字へと好転し、債務超過額も
徐々に解消していくこととなる。また、借入金の返済が進めば、通常、
金利負担も減少していくことが考えられる。
したがって、旅館業のように新規設備投資や改築費用が多い業種については、
現時点での表面的な収支、財務状況のみならず、赤字の要因、新規投資計画
に沿った収益・返済原資が確保されているのか否か、今後の
売上の改善見込みなどを検討する必要がある。
3.本事例の場合においては、こうした検討を踏まえ、債務者自身で
返済原資が確保されているのか否か(代表者等の支援があるのか否か)、
当初計画比80%程度の売上や減価償却費、金利負担の減少等をベースに
した収益水準で今後の返済が可能か否か、あるいは、今後の収益増強策で
どの程度返済原資の積み上げが図れるのかなどについて検討し、
今後も当初約定通りの返済が可能であるならば正常先に相当する可能性が
高いと考えられる。
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今回のポイントは、新規設備投資や改築費用が多い業種については、
現時点での表面的な収支、財務状況のみならず、赤字の要因、
新規投資計画に沿った収益・返済原資が確保されているのか否か、
今後の売上の改善見込みなどを検討したうえで、会社の決算書が
評価されるという点です。つまり、新規投資による収益の確保が
どれだけ確実視されるかという点が大きなポイントになります。
設備投資の経済計算を行うに当たっては、慎重な判断が必要です
この記事以外にも、下記URLのマイベストプロ神戸に私のコラムの
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