信用金庫や地銀は、中小企業へ融資するかどうかの判断を行うに
当たって金融庁の検査マニュアルに従って判断を行います。
その検査マニュアルには、具体的な事例とともに銀行
(信用金庫・地銀)が融資するかどうかを判断したポイントと、
その判断基準の適否について解説が記載されています。
この【銀行交渉のポイント編では】27パターンの事例を紹介します。
中小企業の経営者の皆様におかれましては、
御社の決算内容、銀行との交渉と比べながら読んでいただくと
わかりやすいと思います。
以下の事例集は、すべて銀行(信用金庫・地銀)の立場から
書かれた内容なのでこの文中で債務者と表現されているのは、
一般の中小企業のことです。
【事例-9 代表者個人の信用力・経営資質・後継者の存在が銀行の評価に与える影響は?】
【概況】
債務者は、当信組メイン先(シェア 100%、与信額:平成13年12月
決算期8百万円)。県内を事業区域とする家族経営のトラック運送業者。
代表者(55歳)とその妻(55歳)、及び長男(30歳)が従事している。
【業況】
地場企業の製品配送が売上の殆どを占める。丁寧な仕事ぶりが買われ、
一定の売上、利益を確保してきた。しかしながら、昨年より代表者の
健康状態が思わしくなく、業務に携わることができる時間が限られた
ため、ピーク時の業況に比べ大幅な減収・減益となった。
当信組は、平成10年、事務所・車庫兼自宅の増改築資金に応需して
いるが、業績悪化に伴って、返済は半年前より1~2カ月分滞りがち
となっている。事務所・車庫兼自宅(担保差入物件)の他に見るべき
個人資産はない。 しかしながら、代表者の業務復帰にかける意欲は
強く、ここに来て健康状態も回復に向っている。
代表者は日頃から、当組合には決して迷惑はかけないとしており、
また、長男も代表者の後押しを受けて後継者として事業に励み、
業況改善に努めたいとしている。
【自己査定】
当信組は、債務者の業況は未だ不安定で、返済にも遅延が生じて
いるものの、
①代表者に業務復帰への強い意欲があり、また、当該企業の下請け
業者会の幹事を長年勤めるなど信頼のおける人物であること、
②長男も当該事業に 5 年間従事、取引先の評判も良く、
後継の意思もあること、
③返済は遅れながらも続いていることを勘案し、
要注意先としている。
【検証ポイント】
代表者等個人の信用力や経営資質について
【解説】
1.中小・零細企業等の債務者区分の判断に当たっては、当該企業の
財務状況のみならず、例えば代表者等個人の信用力や後継者の存在及び
経営資質などを踏まえ、今後の業況回復や返済の正常化の実現可能性
について総合的に勘案して、その上で債務者区分を検討する必要がある。
2.本事例の場合、債務者は、代表者の健康上の理由により大幅な
減収、減益となり、返済に遅延が生じ、元本・利息の履行状況
について問題が生じていることから、今後業況の回復が見込めない
のであれば、破綻懸念先に相当する可能性が高いと考えられる。
しかしながら、代表者の信用力、経営資質や長男の仕事振り
などを背景として、代表者の業務復帰に伴う受注増加から、今後、
財務内容の改善や収益性の向上が具体的な経営改善計画や
それに代わる資料で見込まれる場合には、要注意先に相当する
可能性は高いと考えられる。
3.なお、代表者本人の信用力等の検討に当たっては、
代表者との面談、地元の評判等が記録された担当者の業務日誌等
あらゆる与信管理情報に基づいて債務者の実態を把握し判断する
必要がある。
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今回の事例は、『当該企業の財務状況のみならず、例えば代表者
等個人の信用力や後継者の存在及び経営資質などを踏まえ、今後の
業況回復や返済の正常化の実現可能性について総合的に勘案して、
その上で債務者区分を検討する必要がある。』という点がポイントです。
信用の蓄積と後継者育成は、経営上の大きなポイントに
なるようです。
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