【銀行交渉のポイント編-4 代表取締役の長男が、会社の借金を肩代わりする場合の銀行の評価は?】
信用金庫や地銀は、中小企業へ融資するかどうかの判断を行うに
当たって金融庁の検査マニュアルに従って判断を行います。
その検査マニュアルには、具体的な事例とともに銀行
(信用金庫・地銀)が融資するかどうかを判断したポイントと、
その判断基準の適否について解説が記載されています。
この【銀行交渉のポイント編では】27パターンの事例を紹介します。
中小企業の経営者の皆様におかれましては、
御社の決算内容、銀行との交渉と比べながら読んでいただくと
わかりやすいと思います。
以下の事例集は、すべて銀行(信用金庫・地銀)の立場から
書かれた内容なのでこの文中で債務者と表現されているのは、
一般の中小企業のことです。
【事例4 代表取締役の長男が、会社の借金を肩代わりする場合
の銀行の評価は? 】
【概況】
債務者は、当信組メイン先(シェア 100%、与信額:
平成 13 年 12 月決算期20 百万円)。代表者夫婦(共に 55 歳)で
経営するパン屋で、代表者が平成 9 年にそれまで勤めていた会社を
辞め、退職金を基に自宅の一部を店舗に改造し、開業した。
【業況】
開業後約2年は黒字で推移したが、その後は急速に顧客が減り、
現在はほとんど近所の固定客に限られ、大幅な赤字経営となっている。
代表者には自宅兼店舗以外には見るべき資産はないことから、
当信組が応需した開業資金(元利 20 万円/月の返済)は、昨年初より
返済が滞りがちになり、最近では 3 ヶ月遅れて入金されていた。
当信組は 13 年 11 月、代表者から返済条件緩和の申出を受けたが、
その際、代表者の長男が現在の遅延金の一括支払を行い、さらに
その後の返済や最終の回収に問題が発生した場合には、長男自身が
支払う旨の申出を受けたことから、約定返済額の軽減(元利 10 万円
/月、最終期日に残額一括返済)に応じている。当該長男は 35 歳で
子供が1人おり、代表者夫婦と同一市内に住む会社員で、年収は 9 百
万円程度と本人から聞いている(長男は債務者の保証人となっていない。)。
なお、代表者は事業継続に強い意欲を持っている。
【自己査定】
当信組は、債務者の返済能力に問題はあるものの、代表者の長男から
支援意思の確認ができ、資力も問題ないと考えられることから、
最終的な返済の懸念はないとして、要注意先としている。かつ、
当該長男の収入状況や家族状況等を踏まえ今後とも支援を行う資力が
あると認められるのであれば、要注意先に相当する可能性が高い
と考えられる。
【検証ポイント】
代表者の長男の支援について
【解説】
1.中小・零細企業等の債務者区分の判断に当たっては、当該企業の
財務状況のみならず、例えば代表者と密接な関係にある者の支援の
意思及び支援の能力を総合的に勘案して、その上で債務者区分を検討する
必要がある。
2.本事例の場合、代表者は事業継続に強い意思をもっているものの、
売上の減少が続き、業況は低調に推移し、返済遅延、条件変更に至って
いること等を勘案すると、今後経営難に陥る可能性が高く、破綻懸念先
に相当する可能性が高いと考えられる。しかしながら、遅延分については
既に長男が支払解消しているほか、代表者の長男から、条件変更後の
返済や最終の回収に問題が発生した場合は支援を行う旨の申出があり、
3.なお、本事例のように保証人でなく、また、経営に直接関連しない
者の支援の検討に当たっては、当該支援者の支援の意思の確認は
もちろんのこと、残債権の金額と支援者の資力、代表者と支援者との関係、
親密度合等を確認する必要がある。
なお、支援者の資力については、支援者自身の個人収支、借入金や
第三者への保証債務の有無等を確認する必要がある。
仮に、当該支援者に借入金等があり、代表者を支援する資力がないと
認められる場合には、破綻懸念先に相当するかを検討する必要がある。
また、その確認に当たっては、当該長男の支援意思や収入状況等が
当該長男から提出された資料により確認できることが望ましいが、
このような資料がない場合には、例えば、当該長男との交渉結果等が
記載された担当者の業務日誌等に基づいて確認することも考えられる。
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この事例の用に、会社経営に直接関係の無い代表者の家族が
会社の借金を肩代わりする場合でも、肩代わりしてくれる家族に
資力があると判断されれば、会社に対する銀行の評価は、下がりません。
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