【銀行交渉のポイント編】
信用金庫や地銀は、中小企業へ融資するかどうかの判断を行うに当たって
金融庁の検査マニュアルに従って判断を行います。
その検査マニュアルには、具体的な事例とともに銀行(信用金庫・地銀)
が融資するかどうかを判断したポイントと、その判断基準の適否について
解説が記載されています。今回から、27パターンの事例を紹介します
中小企業の経営者の皆様におかれましては、御社の決算内容、銀行との交渉
と比べながら読んでいただくとわかりやすいと思います。
以下の事例集は、すべて銀行(信用金庫・地銀)の立場から書かれた内容なので
この文中で債務者と表現されているのは、一般の中小企業のことです。
【事例 1 債務超過でも正常な融資先と判断された事例】
債務者(法人A)は、当金庫メイン先(シェア 100%、与信額:平成 13 年 3 月決算期
30 百万円)。店周先の商店街で家電販売業を営む取引歴 15 年の先である。
【業況】
5年前近隣地区に大型量販店が進出した影響を受け、売上は徐々に減少し前期で
は 50 百万円とピーク時の 2/3 の水準になっている。そのため、2 期連続の赤字
(前期 1 百万円)を計上し前期に債務超過(前期末 1 百万円)に陥っている。従
業員は現在夫婦2人のみである。
代表者は、商店街の会長を長く務めた人物で人望もあり、事業継続の意欲は強い。
しかし、連続赤字で債務超過にあることから返済財源は捻出できず、このため、代
表者が定期的に債務者に貸し付ける(前期末残高 20 百万円)ことにより返済して
いる。なお、貸出金は自宅兼店舗取得資金等であるが、条件変更は行っておらず、
延滞も発生していない。
また、代表者は、個人として賃貸物件等の資産を多額に保有し、当該賃貸物件か
らの現金収入も多額にある。
最近、同業他社との連携やアフターサービスの充実に力を入れており、その効果
から赤字は解消傾向にある。
【自己査定】
当金庫は、代表者からの借入金を債務者の自己資本相当額とみなすと資産超過で
あり、延滞の発生もないことから、正常先であるとしている。
【検証ポイント】
企業の実態的な財務内容について
【解説】
1.売上の減少により連続赤字を計上し、債務超過に陥っている債務者(法人A)については、
一般的には、当該債務者の財務内容からは返済財源が認められず、要注意先以下の債務
者区分に相当する場合が多いと考えられる。
しかしながら、中小・零細企業等の債務者区分の判断に当たっては、代表者からの
借入金により資金調達が行われ、それを原資に金融機関へ返済が行われている場合が
あり、このような場合、債務者(法人A)の実態的な財務内容及び返済財源を確認する
必要がある。
2.本事例の場合、債務者(法人A)の経営実態を踏まえれば返済能力は認められないが、
債務者区分の判断に当たり、当該代表者からの借入金については、これを自己資本相当と
考えることは可能である。その場合、債務者(法人A)の財務内容は実質的に大幅な資産超過とな
る。一方、債務者区分の判断に当たっては、こうした債務者(法人A)の実態的な財務内容のほ
か、貸出条件やその履行状況、債務者の今後の業績改善の見込や、今後の代表者個人
の返済余力等を総合的に勘案し判断することが必要である。こうした検討の結果、最
近の業況や今後の収益性を踏まえた今後の赤字見込額に比し実質的な資産超過額が
十分にあり、かつ、代表者に今後の正常返済を履行するための十分な返済余力、資産
余力があるならば、正常先に相当する可能性が高いと考えられる。
3.なお、代表者が返済を要求することが明らかとなっている場合(決算書等における
代表者からの借入金の推移により確認等)には、これを自己資本相当額とみなすこと
には問題があると考えられる。
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