【銀行交渉のポイント編-20 元本の返済期間を延長してもらえましたが、安心はできません。】
信用金庫や地銀は、中小企業へ融資するかどうかの判断を行うに
当たって金融庁の検査マニュアルに従って判断を行います。
その検査マニュアルには、具体的な事例とともに銀行
(信用金庫・地銀)が融資するかどうかを判断したポイントと、
その判断基準の適否について解説が記載されています。
この【銀行交渉のポイント編では】27パターンの事例を紹介します。
中小企業の経営者の皆様におかれましては、
御社の決算内容、銀行との交渉と比べながら読んでいただくと
わかりやすいと思います。
以下の事例集は、すべて銀行(信用金庫・地銀)の立場から
書かれた内容なのでこの文中で債務者と表現されているのは、
一般の中小企業のことです。
【事例-20 元本の返済期間を延長してもらえましたが、安心はできません。 】
<概況>
債務者は当行準メイン先(シェア40%、与信額:平成13年3月
決算期166百万円)。地元建築業者を主な取引先としている建築用
木材卸売業者。5年前に当金庫からの借入により賃貸アパートを3棟取得
(法定耐用年数22年、取得額100百万円)し事業を拡大している。
当行は、上記アパート資金(証貸期間15年、6.6百万円/年返済)
のほか、運転資金(手貸100百万円、期日一括1年)に応需している。
<業況>
大手住宅メーカーによる建売物件の増加の影響などから、売上が低迷
しているほか、大口取引先の倒産による売掛金の焦げ付きなどから、
前期赤字を計上している。 財務状況は表面上わずかながら資産超過
となっているが、小口取引先の売掛金の中には長期にわたって回収が
図れていないものがかなり見られ、実質的には債務超過に陥っている。
また、賃貸アパートは、取得当初は満室を維持していたが、
駅から遠いことや、最近駅周辺に格安な賃貸料を提示するアパートが
多数建設されたこともあって、ここにきて空室が出始め、債務者の
資金繰りは悪化してきている。
このため、債務者は当該アパート資金について返済額を大幅に軽減
(4百万円/年)し、最終返済期限を7年延長する条件変更を当行に
要請した。(金利は据え置き) なお、手貸については、6か月毎に
回収、新規実行を繰り返している。 当行としては、現状の本業の
業況や今後のアパートの入居見込では残り10年での完済は
無理と考え、この条件変更に応ずることとした。
<自己査定>
当行は、本業の木材卸の業況が低迷し、財務内容も実質債務超過
になっていることや今後短期間での業況改善が見込めないことから
要注意先としている。
また、証貸については、条件変更を行っているものの、条件変更後
の最終返済期限の延長が法定耐用年数内に収まっていることから、
貸出条件緩和債権(元本返済猶予債権)には該当しないと判断している。
なお、当行は、信用格付けに基づくリスク管理態勢が未整備のため、
中小・地域金融機関向けの総合的な監督指針で示されている基準金利
に基づく貸出条件緩和債権(元本返済猶予債権)の判定を行っていない。
<検証ポイント>
法定耐用年数内での期限延長を行った場合の貸出条件緩和債権
(元本返済猶予債権)の取扱いについて
<解説>
1.貸出条件緩和債権については、銀行法施行規則において
「債務者の経営再建又は支援を図ることを目的として、金利の減免、
利息の支払猶予、元本の返済猶予、債権放棄その他の債務者に有利となる
取決めを行った貸出金」と規定されている。
また、中小・地域金融機関向けの総合的な監督指針は、元本返済猶予債権
(元本の支払を猶予した貸出金)のうち、貸出条件緩和債権に該当するもの
として
「当該債務者に関する他の貸出金利息、手数料、配当等の収益、担保・
保証等による信用リスク等の増減、競争上の観点等の当該債務者に対する
取引の総合的な採算を勘案して、当該貸出金に対して、基準金利
(当該債務者と同等な信用リスクを有している債務者に対して通常適用される
新規貸出実行金利をいう。)が適用される場合と実質的に同等の利回りが
確保されていない債権」が考えられるとしている。
2.本事例のように、設備資金、特に、収益物件取得資金については、
最終期限の延長を行ったとしても、法定耐用年数内であるならば、債務者に
有利な一定の譲歩を与えているとは言えず、貸出条件緩和債権
(元本返済猶予債権)には該当しないのではないかとの意見がある。
しかしながら、中小・地域金融機関向けの総合的な監督指針の規定の趣旨
を踏まえれば、債務者に有利となる取決めに該当するか否かは、元本返済を
猶予する期間の長さのみによって判断し得るものではなく、約定条件改定時
の金利が、当該債務者と同等な信用リスクを有している債務者に対して通常
適用される新規貸出実行金利以上の金利となっているか否かによって判断
すべきである。
3.したがって、本事例のような場合においては、最終期限の延長が法定耐用
年数以内に収っていることをもって貸出条件緩和債権(元本返済猶予債権)
に該当しないということではなく、約定条件変更時の金利水準が、同等な
信用リスクを有している債務者に通常適用されている新規貸出実行金利の水準、
すなわち、当行における信用格付、及び貸出金の保全状況や貸出期間
(17年程度)等を勘案した金利水準を下回っているならば、原則として、
貸出条件緩和債権(元本返済猶予債権)と判断する必要がある。
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今回のポイントは、元本の返済金を延長した場合に債務者に有利となる
取決めに該当するか否かは、元本返済を猶予する期間の長さのみによって
判断し得るものではなく、約定条件改定時の金利が、当該債務者と同等な
信用リスクを有している債務者に対して通常適用される新規貸出実行金利
以上の金利となっているか否かによって判断すべきである。と、いう点です。
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