信用金庫や地銀は、中小企業へ融資するかどうかの判断を行うに
当たって金融庁の検査マニュアルに従って判断を行います。
その検査マニュアルには、具体的な事例とともに銀行
(信用金庫・地銀)が融資するかどうかを判断したポイントと、
その判断基準の適否について解説が記載されています。
この【銀行交渉のポイント編では】27パターンの事例を紹介します。
中小企業の経営者の皆様におかれましては、
御社の決算内容、銀行との交渉と比べながら読んでいただくと
わかりやすいと思います。
以下の事例集は、すべて銀行(信用金庫・地銀)の立場から
書かれた内容なのでこの文中で債務者と表現されているのは、
一般の中小企業のことです。
【事例-18 書換を継続し実質的に長期借入金となっている手形借入金の評価は? 】
<概要>
債務者は、当金庫メイン先(シェア78%、与信額448百万円)。
大手住宅建設業者の下請工事を主に、個人一般木造住宅のほか、
一般建設も手掛けている。
<業況>
大手住宅建設業者からの受注工事が主なことから安定した受注量は
あるものの、業界は全般的に不況であり、建設業者のコスト削減の
影響を受け、3期前から赤字を計上している。
このような中で、新規の大口住宅の受注が減少したことから、
5年前に新規の大規模住宅の受注を見込んだ在庫資金(銘木の資財仕入)
名目の運転資金(手形貸付)については、現状、期日6カ月で書替えを
繰り返しているところである。
なお、在庫の銘木について、仕入後5年を経過しているが、その価値
が毀損している事実はなく、債務者は資金繰りの問題もあり、同業者
への在庫処分を実施することにより、返済に充てたいとしている。
<自己査定>
当金庫は、売上の減少に伴う返済能力の低下は明らかであり、今後、
短期間での業況改善が見込めないことから要注意先としている。
なお、在庫資金(銘木の資財仕入)名目の運転資金については、
当初約定から5年を経過しているが、在庫の処分により回収するもので、
在庫処分による返済実績もあることから返済財源としては確実であり、
貸出条件緩和債権には該当しないと判断している。
<検証ポイント>
書替え継続中の手形貸付に係る貸出条件緩和債権(元本返済猶予債権)
の取扱いについて
<解説>
1.貸出条件緩和債権については、銀行法施行規則第19条の2第1項
第5号ロ(4)において規定されており、その具体的な事例は、中小・
地域金融機関向けの総合的な監督指針において規定されている。
中小・地域金融機関向けの総合的な監督指針では、元本返済猶予債権
(元本の支払を猶予した貸出金)のうち、貸出条件緩和債権に該当する
ものとして「当該債務者に関する他の貸出金利息、手数料、配当等の収益、
担保・保証等による信用リスク等の増減、競争上の観点等の当該債務者に
対する取引の総合的な採算を勘案して、当該貸出金に対して、基準金利
(当該債務者と同等な信用リスクを有している債務者に対して通常適用
される新規貸出実行金利をいう。)が適用される場合と実質的に同等の
利回りが確保されていない債権」が考えられるとしている。
これは、返済期限の延長が行われた場合であっても、条件緩和後の
債務者に対する基準金利が適用される場合と実質的に同等の利回りが確保
されているならば、貸出条件緩和債権に該当しないというものである。
2.書替えが継続している手形貸付については、債務者の返済能力の低下
(信用リスクの増大)から期日返済が困難となり、実際は条件変更を繰り
返している長期資金と同じ状況(いわゆる「コロガシ状態」)となっている
場合があるため、その原因について十分に検討する必要がある。
本事例の場合、在庫資金(銘木の資財仕入)について書替えが繰り返されて
いる背景を見ると、銘木を使用した新規の大規模住宅の受注の減少により、
発生したものであり、債務者の支援を目的に、当初の返済予定を大幅に
延長したものと認められること、また、債務者自体の信用リスクについても、
建設単価引き下げによる業況不振から増大していることが伺われる。
3.しかしながら、基準金利が適用される場合と実質的に同等の利回りが
確保されているかの検証に際しては、担保・保証等による信用リスクの減少等
を含む総合的な採算を踏まえる必要がある。
本事例の場合、在庫資金(銘木の資財仕入)名目の運転資金については、
在庫の処分により全額回収するもので、在庫処分による返済実績を勘案すれば
返済財源は確実と見込まれ、信用リスクは極めて低い水準にあるものと考えられる。
したがって、当該貸出については、信用リスクコストを加味する必要性が
極めて低いため、条件変更時の貸出金の金利水準が金融機関の調達コスト
(資金調達コスト+経費コスト)を下回るような場合を除き、原則として、
貸出条件緩和債権(元本返済猶予債権)に該当しないものと判断して
差し支えないものと考えられる。
4.なお、書替えが継続している手形貸付であっても、いわゆる正常運転
資金については、そもそも債務者の支援を目的とした期限の延長ではない
ことから、貸出条件緩和債権には該当しないものと考えられるが、貸出当初
において正常運転資金であっても、例えば、在庫商品について価値の下落等
が発生し、返済財源もない場合には手形書替え時をもって貸出条件緩和債権
に該当することもあると考えられることから、その実態に応じた判断が必要
であると考えられる。
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